月を見上げながら黒羽を待っていると、いつの間にか隣にいた。



……気配消さないでくれないかな。



「……帰らないのか?」



「帰るよ。月に帰る」



今日は満月。かぐや姫が月に帰る日だ。誰にも止めることが出来ないまま。



「は?」



「もし私が月に帰ることになっちゃったら、その時は黒羽が止めてよね」



そんな日は一生来ないだろうけど。重要なのは、その日が来る来ないじゃない。



「僕がいつ離れていいなんて言ったんだ。大体僕は―――……」



そこまで言って、口をつぐむ黒羽。え、何、何なの、気になる!



「僕は?」



「……別に」



実に素っ気ない、だけど黒羽らしい誤魔化し方。結局何なのかわからない。



「いつか教えてね」



「明日にはもう忘れてるさ」



「……そうかも」