「……まぁ、それが普通なんだろうな。僕は狂者だから、常人の感覚は理解出来ない」
……あれ。
黒羽、ちょっと柔らかくなった?もう少し罵倒するかと思ってたけど……。
「だが、だからといって甘くする程僕は優しくないからな。自分の身は自分で守れ」
「当たり前だよ」
「……どうだか」
黒羽は別に見下した風でもなく、冗談めいた感じでもなく、無感情にそう呟いた。
つまり黒羽は素直じゃないんだね!
「そろそろ11時ですが、固まっていてよろしいのですか?」
竜鄙さんの言葉で、はっとして気を引き締める。これからは命の取り合いになる。
「相手がわからないことにはどうも言えないよね。でも、バラバラになった時の方が危険は多いし」
「だがこんな所で塊になっていても仕方ない。少し距離を」
―――おこう。
多分黒羽はそう言おうとしたんだろう。けど、明確な殺気を感じ、口をつぐむ。