「一葉ちゃんは騒いだりしないんですか?泣いたりとか暴れたりとか」
誘拐だもん。あんなに大人しい方が吃驚。
逃げようと思えば、竜鄙さんが学校行ってる間でも今でも、チャンスはいくらでもあるのに。
「何か知りませんが、誘拐しちゃって下さいとか言われました」
「えええっ!?逆に頼まれたパターンですかっ?わぁ、素敵ですね」
「素敵って……。でも、嬉しいものですね。好きな相手から拒絶されないというのは」
「それは誘拐したのが竜鄙さんだったからじゃないですか?
竜鄙さんだったら、私を抜かした殆どの女性が誘拐されたいと思いますよ」
「そうでしょうか……。とてもそういう風には思えませんけど。
一葉ちゃんって優しかったり冷たかったりするんですよね。
優しくしてくれたと思ったら突き放されて。終いには躱されちゃいました」
「中々やりますね」
「はい、治療完了です」
そう言って竜鄙さんはニコッと微笑んだ。治療した後の竜鄙さんの笑顔は営業スマイル。