「あたしは桐生芽唯。よろしくね。で、こっちのうっさいヤツが…」
「誰がうっさいヤツだよ!」
「まぁまぁ。……てゆーかアンタ…名前何だっけ?」
ただ単に忘れただけか。
それとも、もともと知らないか…。
まったく覚えていない。
あたしは腕を組んで考える。
…………やっぱわかんない。
「知らないの?」
「…今思えば」
「自己紹介してなかったっけな。俺は堀内桜太(Horiuchi ota)」
「おーた?」
「うん。桜に太い」
桜太か。
なんか…なんか……。
「ちっちゃい子みたい」
あたしはボソッと呟く。
その声が聞こえていたのか、桜太が勢いよくこっちを向く。
「お前、今なんだって…」
「はーい、これからよろしくね!」
もう少しで言い合いになりかけたあたし達を止めるかのように、横から舞桜が入ってきた。
…助かった。
「「よろしく!」」
またまた桜太と声が重なる。
あたし達は数秒睨み合い、プッと笑った。
外では桜の花びらが、雨のように散っている。