…ふと気付いた時、目の前にある白いものが、車だと言うことはすぐに解った。
きっと夜だ。暗い中にあった車は、妙に目立っていた。
運転席のドアが空いている。
車の中には誰もいない様だが、前方へ目をやると、背の高い、痩せた青いTシャツの男が立っている。若い男の様だ。
暗くてよく顔は見えないが、目の辺りが光って見えたので、もしかすると眼鏡をかけているかもしれない。
男は、落ち着きなく辺りを見回した後、急に車に乗り込み走り去った。
彼が、その場から逃げたのだと分かったのは、そこに残された少女の姿が、既に死んでいると確信出来たからだ。
高校生くらいに見えるが、実際はよく分からない。
現状から見て、さっきの車にひかれたに違いなかった。
かなりスピードを出していた事は、彼女の姿を見てよく分かった。
祈る気持ちで、彼女を見下ろした…
…遠くからかん高い音が聞こえる。その音はどんどん大きくなり、それが車のクラクションだと認識出来た時には、既に道路は渋滞ま近の惨事になっていた。
まだ視界が正常に戻らないまま、慌てて交差点を渡り切る。
心臓が激しく波打っていた。