「まったくよぉ~!聞いてくれよオヤジ!」


髭の手入れをしてもらいながら新聞を読んでいた羽毛田は、思い出した様に理髪店の店主に向かって、先程の美容院の対応を愚痴り始めた。





「理髪店と美容院は違いますからね……」


その話を聞きながら、店主は鏡に映った羽毛田の頭を見て、美容院は制度上…髭のみの手入れが難しい旨を説明してくれた。
そのうえで、毛髪に悩む羽毛田に、こんなアドバイスもしてくれた。


「いやあ~お客さん。そのアタマじゃねぇ~♪
最近じゃあ、良いカツラもありますからお客さんも試してみたらどうです?」


「ヅラなんて被れるかっ!ありゃあ偽物だろ!ニセモノ!」


その場凌ぎのヅラなんぞに興味は無い。
羽毛田の望みは、あくまでも“自毛”による発毛である。


「もっと画期的な発毛剤が出ねぇかなぁ……」


羽毛田は、そう言って大きな溜め息を吐くと、また新聞に目を落とした。