「あら~ダ~リン~♪
待ってたのよ~~♪」


逆探知の準備をしていた捜査班は、拍子抜けした。


「なんだよ……彼氏からか?…こんな時に勘弁してくれよ……」


「あ~~いい!いい!
録音しなくていいから!」


山下は、苦笑いをして手の平を横に振りながら、スタンバイしていた捜査員を制止した。


全員の呆れた視線を浴びながら、朝霧はなおも喋り続けている。


「ヤッダァ~♪ホントにぃ~?」


「いつまで喋ってやがんだ……あのアマは!」


そんな思いを抱いていたのは、羽毛田だけではなかっただろう……苛立ちの混じった不穏な空気が、社長室全体に漂っていた。


「まったく…社長秘書のくせに、こんな時に彼氏と私用電話なんてしてる場合かよ……」


「後からかけ直すとか、考えないのかね……」


皆で朝霧の悪口をヒソヒソと言っているのが、聞こえたのだろうか……


「うん♪わかった~♪
じゃあ、またね~ダ~リン~♪」


ガチャン!


ようやく受話器を置いた朝霧が、睨みつけるような顔で周りを見回した。


「な…なんだよ…その顔は?」













「犯人からでしたわ……」


「なにいいぃぃ~~~~~~~~!!!」


「相手を刺激しない様に、親しみやすい口調で話してみたんですが……ナニカ?」


「親しみやす過ぎるわああぁぁぁ~~!!!」