藪製薬では、社長室に乗り込んだ羽毛田と黒崎が“鶴田教授誘拐事件の捜査の陣頭指揮を取らせろ”と、なかば脅すような態度で社長の了承をもらっていた。


「いいんですか?社長……あのハゲ、居座っちゃってますけど!」


苦虫を噛み潰した様な顔で、羽毛田を横目に見る秘書の朝霧。


「今更、帰れとは言えないだろ……あの人怖いし……」


気の強い朝霧とは対照的に、社長はすっかり羽毛田にビビっていた。


「電話はまだかかって来ねえのか……」


羽毛田は、高級そうな社長専用の椅子を占領して、煙草を吹かしながら犯人からの電話を待っていた。


やがて、机の上の電話が鳴ると、一回目の呼鈴が鳴り止まないうちに、羽毛田が受話器を取った!


「はい!社長室!」



一同に緊張が走った!








『あの……開発中の風邪薬なんですが……思ったような効果がまだ現れないので、当初より少し予定が遅れそうかと……』


「知るかっ!そんなもん!タマゴ酒でもブチ込んどけっ!」


ガチャン!


肩すかしを食らった羽毛田は、そう怒鳴りつけて勢いよく受話器を置いた。