用件を聞くまでもない……こういう輩は、適当にあしらって追い返すに限る。
こういう人間をトラブルなく追い返すのも、受付嬢の大事な仕事のひとつだ。
秘書の朝霧から連絡を受けた受付嬢は、羽毛田にこう切り出した。
「申し訳ございません……生憎、お約束の無い方とは、社長は面会出来ないと申しておりますので……」
「なんだとぉ~っ!
爆弾仕掛けるぞ!コラァ~!」
(だから言わんこっちゃない……)
内心そう思いながらも、黒崎は、怒りまくる羽毛田と受付嬢の間に割って入った。
「まあまあ、ボス。
そんなに興奮しないで、ここは私に任せて下さい♪」
そう言うと、黒崎は受付嬢の方に向き直って、低姿勢な態度で、羽毛田の無礼を謝罪した。
「いやあ~♪
“女優の伊東美咲”似のお嬢さん、大変失礼致しました♪
貴女があまりにも美しいもので、我々もつい興奮してしまって!」
黒崎の歯の浮くような台詞に、羽毛田は呆れて呟いた。
「へっ!そんなミエミエの手に引っかかる奴が、いる訳が……」
「どうぞ♪お通り下さい♪」
「さっきと全然態度がちがうだろっ!」
何はともあれ、羽毛田と黒崎の二人は、無事に社長室へと行く事が出来たのだ。
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