[大丈夫だよ、シン]

そっとシンを抱きしめると、
力なくうなずきながらも
何かに怯えているようだった。

[大丈夫だからね。くるしい?深呼吸できる?]

シンはゆっくり呼吸を整えると、
すぐに落ち着いたようで

「ごめんね...」
と呟いた。

[シンは謝らなくていいんだよ]

「この前の...飲み...たい...」

[ココア?]

「ココアっていうの?」

シンはココアを知らなかったという事実に
なんだか気が抜けて、
すぐに作ってあげると、
はじめてシンが笑った。

正確には、はじめてシンの笑顔を見た。

かわいくて、やさしい笑顔だった。

会わない間、痩せたようにも見えるシン。

[ごはん食べてる?何か作ろうか?]

シンは、笑顔で
「うん」と答えた。

オムライスを作るあたしを不思議そうに眺めるシン

本当はもっと栄養があるものがよかったけど
サッと作れるものはオムライスしか浮かばなかった。

出来上がったオムライスを眺めるシン。

嫌いだったのかなあ...

「これ、なに?」

???

[オムライスだよ...見えない?ごめんね?]

料理もっとちゃんとできるようにならなきゃ
オムライスだと気づかれないなんて...。
ショックだった。
「オムライスって...なに...?」

???

[オムライス、知らない?]

ココアもオムライスも知らないシンに
すごくびっくりした。
それからシンはほとんど料理を知らないことがわかった。

あたしは胸が焼けるように、痛かった。