紡ぎ出そうとした心の叫びは、扉を開け放つ音に掻き消えた。
「花村、さん・・・・・・?」
涙で潤む視界に映るのは、よく知った顔。
メイド服と乱れぬ髪と、いつも自分を励ましてくれた、優しいお姉さん。
「月野ちゃん!」
「邪魔が入ったか」
静貴の顔から笑みが消え、月野を掴んでいた手が離される。
椿は月野に駆け寄ると、静貴を殺意に満ちた目で睨んだ。
瞳は既に、赤い。
「でも、君なら大歓迎だよ、椿」
再び浮かんだ笑顔は、月野に向けられたものとは違っていた。
「月野ちゃん、ナイフを」
「は、はい」
「・・・・・・悪いんだけど、月野ちゃんの血を刃に塗ってもらえる?」
「え?」
よくわからない願いだが、椿の言う通り、腕から流れる自分の血を、ナイフの刃に塗った。
「ありがとう。さぁ、逃げなさい」
「で、でも・・・・・・」
迷う月野に、椿は笑いかける。
「大丈夫よ」



