「そういえばさ、白石は好きな奴とかいねえの?」

「…は?」

今まで告白のシチュエーションの話で盛り上がっていた友人の一人が突然、俺に話を振ってきた。そんなことを聞かれたことも無いので返答に困っていると、他の友人達も口々に同じことを言ってきた。

「あ、俺も気になるわ。」
「白石って女子の話とかになると急に口数減るよなー。」
「彼女とかいねえの?」
「俺、白石のこと好きな奴知ってるぜ。」
「まじか!付き合えばいいじゃんよ。」

これだから面倒なんだ。
もしも付き合うとなっても相手の機嫌を伺って、何かにつけ報告しなければならない。高校生同士の恋愛なんて不毛だ。本当にお互いが好きで付き合っている分には全く構わない。寧ろ応援したくなるくらいだ。でもそういう人は高校生には少ない。
告白されたから付き合うとか、自分だけ恋人がいないから急いで恋人を見つけたとか。そんなもんだ。事実、俺の回りにもそういう奴らはごまんと居る。

「好きな人かー。…今まで皆には黙ってたんだけどさ、」

「お、なんだなんだ。実は彼女いましたー、とかか?」
「なんだよ、彼女いるんなら教えろよなー。」

「真剣に聞いてくれないか?」

皆がごくりと喉を鳴らす。

「実は俺…、ゲイなんだ。」

嫌な沈黙が流れる。
俺はその沈黙に耐え切れずにプッと噴出した。

「あはははっ、冗談だよ冗談!皆、真剣に聞きすぎだって。」

俺の笑い声に釣られるように友人達も一斉に笑い出した。

「んだよー、びっくりさせんなって!」
「白石の顔がマジだからびびったわー。」
「俺も!こいつマジかよって。」
「いや、俺は白石がゲイでも受け入れるぜ!」
「まだ言ってんのかよ。まあ俺もだけどな!」

俺の友人達は本当に良い奴らばかりだと、改めて確認させられた。