それを聞いた有里は、動きを止めて少し考える。今度ある祭りは県下最大の花火大会だ。祭りには浴衣を来て行ってみたいし、それが有里の憧れだった。


だが、西田先輩に聞いてみないことには分からない。


「ううん、分かんない。帰りに一緒だから、先輩に聞いてみる」


夏課外は午前中のみ。


西田先輩と有里は学年が違うため、帰りくらいしか会う時間が無い。住んでいる方向も違い、そのまま街でデート……というパターンも無い。


有里と香織はそんなことを話しているうちに、朝補習のチャイムが鳴り響いた。






そんな接点の無い西田先輩と知り合ったのは、一年生の始業式から数日が経った時だった。クラスにやってきた西田先輩は、たまたま近くにいた有里に尋ねたのだ。


『遠藤遼平ってこのクラス?』


尋ねられた有里は、始業式の日にした自己紹介を思い出す。遠藤は確か出席番号が一番で身長が高かった人だったはずだ。


『はい。呼びましょうか?』


『うん。西田が呼んでるって言って』


『ちょっと待ってください』