にやりと笑う香織に顔が赤くなる。他人から聞かれるととても恥ずかしい。そして、この前の西田先輩の声が蘇り、顔を俯けた。


「うわ、リアルな青春だね、コレ……。
はいはい、リア充、羨ましー。

てか別に恥ずかしいことないでしょ?」


「……別に、何も無いよ。西田先輩、塾で忙しいから全然会わないけど、でもあんまり邪魔して面倒臭いって言われたくないし……」


ぼそぼそと呟くと、香織が「はあ!?」と大きな声を上げる。その声音には怒りが込められているように感じた有里は、恐る恐る香織の顔を見つめた。


「彼女がちょっとのワガママ言って『邪魔』だとか言わないでしょ! しかも西田先輩だよ? 遊びに行けば?」


「うん。今度の祭りに誘ってみたら、先輩、行くって言ってくれたよ!」


「ふーん、良かったじゃん」


よしよしと子供をあやすように有里の頭をポンポンと撫でる香織。一つに結んだ長い髪が、その動きを受けて揺れた。


「で、浴衣で行くの?」