「ほら、ケータイ貸して」


千秋が打ち上げ花火を手早く撮影すると、画面には綺麗な赤い円の花火が写っていた。歓声を上げて保存すると、千秋が有里に小さく言う。


「ケータイのカメラって遅えから、綺麗なときに撮ったらだめ。あ、開いたなって思った後に押さねえと」


詳しい千秋に目を開くと、彼は少し戸惑って首をさする。プリクラのときにも同じようにしていたことを思い出し、有里は首を傾げた。


「いや、去年は家族に無理矢理連れて行かれたんだよ。

プリクラも観覧車も、マジ恥ずかしかったっての……。親父と乗ったんだぞ、観覧車……マジ有り得ねえだろ」


「だから、詳しかったの?」


「……まあ。俺、写真係。親父は買い出し係。女たちは食べて見てるだけ」


悲惨な顔をする千秋には悪いが、ぷっと噴き出し笑いをする有里。西田家はどれだけ男の地位が低いのか。お父さんまでとは――。


「笑うなよ」


「ご、ごめんね?」


言い負かされている千秋。
ちょっとだけ見てみたい気もする。