見上げる有里に気付かない訳でもないだろうに、素知らぬ顔で外を見る西田先輩。


有里はむっと膨れて抱き付くが、頭を撫でられるだけで何も反応しない。




「ち――千秋、もっとキスして」


「……やっと名前で呼ばれた」




本当に嬉しそうな声で笑った西田先輩――千秋は再び唇を重ねる。そっと有里の頬のラインをなぞり、首に降りてくる指に小さく息を漏らした。


吸い込まれるように目を閉じ、唇を挟まれる感覚を受けながら、何度も千秋、千秋と彼氏の下の名前を囁くように呼ぶ。


甘く熱くて、少しだけ甘酸っぱい感じがとても切なかった。ようやく隙間から入ってきた舌に返し、首もとにある千秋の手を捕まえる。


すぐに喋る余裕も無くなり、ただ深いキスだけをし続ける。捕らえたはずの手は、いつの間にか恋人つなぎな変えられて、強く強く握られた。


顔が離れると、いつもより男らしく色っぽい目をしている千秋と視線が合った。どくどくと心臓が暴れ始める。




「ここ開き過ぎだし、マジで」


「え? 千秋……っ」


少し硬質な千秋の髪の毛が有里の喉元をくすぐった。湿った何かの感覚が首の下に当たり、きつめに吸い上げられる。


そこを見下ろせば、胸元に出来た赤い痣に唇を寄せる千秋がいた。


「服、可愛いけど、上から見えるから」