ここは通学路だ。部活動帰りだろうか、体操服の中学生がちらほら歩いている。対して、二人の身体は超至近距離、端から見れば、単にイチャつくバカップル。


「だめ、あの子たちに見えちゃうよ……」


「だったら、もっと見せてみる?」


――また、悪戯な表情。


「やだ。本当に嫌だからね」


「ま、確かに教育上よろしくないな」


さっと身体を離し、何事も無かったかのように歩く西田先輩。有里だけが恥ずかしがっているようで、その澄まし顔でおどけた台詞が少し悔しい。


「教育上って、何か先生みたい」


「そう? だって先生になるんだから」


「そっか。……そうだよね。あんなに頑張ってる西田先輩だったら、きっといい先生になれるって思うよ」


これは偽りのない本心だ。やはり、運動系の部活動に入っていた人は、集中力が違う。それに、先生とは何といっても西田先輩の眩しい夢なのだから。


高校生になるまで、夢も何も無かった西田先輩。プロバスケットボール選手になりたいとか有名人になりたいとか――現実離れした夢を語るほど子供でもなかった。


「先輩は何の先生になりたいの?」


「――あれ、言ってねえか。理科だよ理科。物理と化学は得意だけど生物がなー。いや、嫌いじゃねえけど得意でもねえし」