「あはっ、西田先輩がデレてる〜!」


「超意外なんですけど!」


「聞いてるこっちが恥ずかしいです!」


顔が上げられない有里に対し、キャーキャーと心底可笑しそうに笑う一年生たち。


どうしようもなく恥ずかしさが限界に達した有里は、西田先輩と繋がった手を振りほどき、「もう帰る!」と言って道を走り出した。


「あ、おい、待てって!」


焦ったように追いかけてくる西田先輩を無視して走る。自分が怒っているのか拗ねているのか、それとも甘えたがっているのか――よく分からなかった。


直ぐに追いつかれて腕を掴まれてしまう。


「ごめん、ちょっと調子乗った。……でも、そんなに怒らなくてもいいじゃん?」


「怒ってないけど……! 他の子の前であんな……あんな恥ずかしいこと言わないでよっ」


赤い顔で睨むと、西田先輩はいつものように「わ、真っ赤」と、くすくす笑みを零した。西田先輩のこの表情を見た有里は、怒ろうと開けた口を噤む。


いつもは優しい西田先輩なのだが、稀に悪戯な笑みを浮かべる。それが妙に心臓に悪くて、どきりと痛いほどに高鳴る胸を抑えるのが大変なのだ。


「もう」と恥ずかしさを誤魔化して怒った振りをする有里。本当に怒っていないことは西田先輩にも分かったようで、「悪ぃ」と笑いながら呟いた。


「それより、祭りの話!
……私、浴衣で行きたいな」