ローファーを履いて玄関を出ると、西田先輩はこちらを見て立っていた。いつもの優しくて少し強気な表情が有里をじっと見つめる。


彼の元に行く間、有里はある事に気付いた。


正門にいる女子バスケットボール部の生徒たち。


彼女たちは校外を走った後なのか、門の付近で座って話したり、汗を拭って水分補給をするなど、休憩をしているようだ。


彼女たちの数名がこちらを――正しくは西田先輩を見つめていた。


彼女たちに気付いた西田先輩が「お疲れ」と軽く手を振ると、彼女たちは声を上げて「お疲れ様です!」と笑顔を見せる。


西田先輩は男子バスケ部の元副キャプテン。女子バスケ部とも同じ競技のよしみで、まるで一つの〝バスケ部〟というように仲が良かったそうだ。



「一年生は外練? 頑張れ」



嬉しそうに駆け寄ってくる数人を見た有里は、笑いながらも不安な気持ちになる。


嫉妬という色眼鏡を通して見ているからだろうか。彼女たちが西田先輩に恋をしているようにしか見えなかった。


「先輩の彼女さんですか?」


「ん。可愛いでしょ。あげねえよ?」


またぐっと手を握られる。引き寄せられながら、西田先輩に羞恥心は無いのだろうかということを本気で考えた有里だった。


「女子に何言ってるんですかー!」