さやか「もっと重要な仕事?」
イザべラ幹部は、少し間を置いてこう言った。
「それは、浄化作業終了後にしてもらいます。
その仕事とは、ずっと慎一のそばにいること、そして今度こそ本当の意味で
彼を幸せにすることです。
二人で力を合わせて慎一を支えていくのです。
貴方達の仕事は、浄化作業で死ぬ事ではありません。
もし、貴方達が死ねば、慎一を再び不幸にするだけです。
宜しいですか、慎一のこれからのためにも決して死んではなりません」
 
「イザベラ幹部の慎重な作業のおかげで、誰も犠牲者は出ませんでした。
イザベラ幹部も無事で、今は天上界で休んでおられます。
でも、イザベラ幹部は、最悪の事態も想定していたのでしょう。
もしかしたら、浄化作業で力尽きるかもしれないと、多分、自らの死を覚悟していたんだと思います。
私達を浄化作業から外したのは、自分が死んだ後の、慎一さんの将来を考えてのことだと思います。
イザベラ幹部は、物事を深く考える方ですから。
今思えば、遺言のつもりだったのでしょう」
静かに語るエレーナの話にじっと耳を傾ける慎一。
「イザベラ幹部、そこまで俺の事を……」
慎一はあの一件以来、天上界の連中は皆同じだと思い込んでいた。
今まで、イザベラ幹部も自分を殺そうとした他の幹部達と同じだと決め付けていた。
しかし、そうではなかった。

 「慎一、そろそろ本契約をするわよ」
「え? 姉さんとでも契約しなければいけないの?」
「もちろんよ」
さやかが当然よという顔をする。
「でも、姉弟で契約って何か変だな」
「そうだね」
ふたりで顔を見合わせ、思わず苦笑する。
「でも、俺ひとりでふたりも天使を独占していいのかな。なんか幸せの独り占めみたいだし……」
「それなら全然平気よ。だって私達姉弟じゃない」
「そうか」
慎一は、こうしてさやかとも正規契約を交わした。

 数日後、
「あの、エレーナ、この間の告白なんだけど
俺もエレーナのことがすごく好きだ。だから浄化を受け入れようって決めたんだ。
エレーナのため、そして俺自身のためにも幸せになろうって思ったんだ」
「慎一さん、嬉しいです。私の気持ち、伝わったんですね」
エレーナは、涙を流した。
慎一とエレーナは抱き合った。そして、キスを交した。
それから、しばらく抱き合ったままでいた。

 エレーナ、さやかと3人で暮らすことになった慎一。