「え…あっ」


杏里がうんと言う前に、その子は杏里のお弁当箱から卵焼きを手掴みで取り出し、口の中にほうり投げた。

突然のことに唖然とする杏里をよそに、口をもごもごさせながら幸せそうな顔をする少女。


「うわぁ~おいしい!!お母さんの手作り?」


その子は杏里の目をじっと見つめて問いかけてくる。

杏里がなかなか答えられなくても、ずっと返答を待っていた。


「これは……自分で作ったの」


やっと返せた一言。


おそるおそる彼女をみると、ぱっちりした目をさらに見開いて「うそー!」と叫んだ。