―――放課後。



「杏里ー帰ろっ」


「胡桃」


胡桃が教室に迎えに来てくれた。

急いで帰り支度をする。


教科書やらノートやらをかばんに詰める。


準備が終わってかばんを肩にかけた。

そのとき。


「じゃーな、荻野」




一瞬、止まった。


振り向いた。


野球の練習着に着替えた神木くんが、うちに向かって片手をあげた。


顔は、別に笑ってはいなかった。



「うん。またね」


自然と顔がほころぶのが分かった。


うちも小さく手を振った。