「それ本人が言ったの?」

「え~ちがうよ、噂!」

「じゃあ絶対違うって~!うちの事なんか好きになるわけないよ、あはは」


このときは軽く受け流した。

杏里はまだ人見知りじゃなかったからこんなノリで話せた。

だけど田中くんみたいな目立つ方の男子とはあまり話をしたことがない。

だからこの女子たちの話を、杏里は信じていなかった。


しかしそれから数日後。


「俺杏里ちゃんが好きなんだけど」


とある日の昼休み。

杏里はその田中くんに、屋上に呼び出されて告られた。


「えっ…ええ!?」


ありえない。

うちなんかのどこがいいって言うんだ。

この前うちに田中くんの噂を言いに来た女子たちのほうがオシャレでいまどきで可愛いじゃないか。


そんなことを考えていて。

結局どう返事したらいいのか分からなくて。


そのまま時間は過ぎた。