「ま、隣の席だし。流れで聞けるんじゃない?」

ね!と、にっこりする美夏。

「…そうだよねっ」

あんまりうちが考え込むから、気遣ってくれたのかなぁ。

だとしたらちょっと嬉しかったかも。







「ってわけで…今日はアドレス聞けなかったの」

「そっかぁ…。でも杏里人見知りだから仕方ない!」


放課後の教室に残って、遠くから野球部の練習風景を眺める二人。

時折カキーンと、ボールがバッドに当たって弾ける音が聞こえる。


「杏里…無理しなくていいんだからね?」

…どきっとした。


胡桃はさっきまで神木くんを探してきゃあきゃあ言ってたのに。


いきなり真剣な声になって、うちの顔を覗き込んで言った。