叩かれる!?
殴られる!??
何する気!!??
怖くて…
恐ろしくて…
目をギュッと瞑った。
すると―――――、
膝の上でギュッと握った手に…
彼の手が優しく重なり…。
思わず、目を開けると。
彼が目の前にしゃがみ込んでいた。
えっ!? 何???
「けど、休み中は会えないと思ってたから。こうして会えるんなら、悪くないな」
「え?」
“悪くないな”……??
どういう意味??
目の前の彼が優しく微笑んだ。
//////////////
なっ、何!?今の笑顔!!
極上王子スマイルじゃなかったよ?
ブラック王子スマイルでもないし。
……スペシャル王子スマイル?
そんな超とびきりの笑顔を見せられたら…
女の子は、みんな…勘違いしちゃうよ。
すると――――――――!!
ゆっくり……ゆっくり………
彼が顔を近づけて来た。
え、えっ……えっ……!?
いつもの有無を言わせずするキスでなく、
振り返りざまにする不意打ちキスでもなく、
優しい表情で…
そっと………唇が重なった。
それも、いつもより……長く。
唇が離れても恥ずかしくて、
どうしていいか分からない。
恥ずかしすぎて…
彼の顔をどんな顔して見たらいいのか。
怖くて……目が開けられない。
「絢?」
「…………はい」
ゴンドラが揺れ、
甘い香りがふわっと香る。
腕に何かが触れた気がして…
そっと瞳を開けてみた。
すると、隣りに彼が。
「たまには、俺んち来いよ」
「へ?」
「勉強……教えてやる/////」
「えっ?」
「なっ?///////」
「…………はい///////」
顔が赤く見えるのは気のせい?
口調はいつもと変わらず俺様だけど、
表情が柔らかく感じるのは、私の自惚れ??
遊園地デートから1週間。
『たまには、俺んち来いよ』
まさか……そんな日が、来るとは思ってもみなかったよ。
あれはあの時だけの話かと…。
だから…あえて触れずにいたのに。
昨夜の1通のメールで、
私は今日、再び“下僕”と化す。
無視出来れば良かったんだけど、
“何時に来るかメールしろ”
まさか、見てませんでした…とは言えない。
後々さらに面倒な事になるだろうし。
はぁ…。
私の胸が早く成長してくれれば…
こんな想いをしなくて済むのに。
どうして……
ちっとも成長しないの?……私のお胸さん。
栄養が足りない?
マッサージが良くないのかな?
も、もっ、もしかして、一生このまま?
現在Aカップ。
ブラジャーなんて、意味を成して無いくらい…ペタンコ。
この5年…全く成長してない。
毎日思う…私って病気?
何か…何処か…悪くて成長しないの?
母親からは…
『私も同じだったのよ。高校2年の春頃から、ある日突然成長し出して。今じゃ、Dカップ。ウフフッ…』
私はこの言葉を信じてる。
だって、目の前に豊かな胸のお母さんがいるんだもん。
きっと、私だって…あと1年くらい我慢すれば。
きっと…魅惑のナイスバディを手に入れられる……ハズ?
けど、実際…現実は容赦なく私を苦しめる。
生理が初めて来たのだって…つい何か月か前。
今どきの女の子は、小学生で来る子もいるのに。
身長154センチ、体重39キロ。
口に出さなくても分かる。
かなり痩せてるって…。
比べちゃダメだって分かってる。
けど、やっぱり女の子だもん。
可愛いお洋服いっぱい着たいし。
夏に海にだって行きたい。
けど“女性”としての成長は…
まだまだ発展途上……なんだよね。
周りの子が成長するにつれ、
どんどん落ち込む……自分。
どうしてなんだろう。
なんでなんだろう。
いつになったら…。
どうやったら…。
何したら…。
考えても考えても答えは見つからず。
そして、辿り着いた先が…
この“超極厚パット”!!
雑誌に“超デカ盛り”と表示してあって、
お母さんにおねだりしてゲットした。
初めて着けてみる時は緊張したけど、
Tシャツの生地越しに膨らんだ胸を
上から見下した絶景に感動!!
まぁ、盛るどころか、ブラの生地の中にパットを詰めてるだけなんだけど。
それでも私的には革命的に進化した…気がしたの。
その日から…
憑りつかれたように…
この魔法のパット様を肌身離さず
毎日寝食を共にしている。
「絢~出なくていいの~?もうすぐ10時になるわよ~」
「は~い!!」
はぁ…。
仕方ない……行きますか?
母親の呼びかけが合図となり、
課題の入ったバッグを手にして。
ご主人様の待つ“魔の巣窟”へ
いざ、出陣!!
ピンポーン。
とうとう来てしまった。
………魔の巣窟へ。
「絢、開いてる。入って来い」
「…………はい」
1週間ぶりに聞く彼の声。
少し低めの冷たい感じ。
そして相変わらずの俺様口調。
躍り出す…
心臓に手をあて…深呼吸。
「お邪魔します」
「………上がれ」
玄関に立ち尽くしてる彼。
腕を組んで仁王立ち。
相変わらずの…俺様。
靴を揃え、彼の後を追う。
着いた先は彼の部屋。
「何処でも好きな所に座れ」
「………はい」
彼がソファの真ん中に座ったのを確認して、
前回同様、ラグの上に座る。
「何、ソレ」
「へ?あっ、コレ母からです」
今日の事を話すと、超ハイテンションで用意した。
ウチの母親特製“ミルクレープ”
差し出す手が震える。
そもそも、こういうの嫌いだったらどうしよう。
「手作り?」
「はい」
「マジで?」
彼は何やら嬉しそう。
こ、こっ、これは貴重じゃない?
普通に笑顔だよ!!
ん?
もしかして、甘いのが好きなのかな?
この間もプリン食べてたし。
「コレ、お前じゃ無くて母親?」
「え?……はい」
「へぇ~」
!!!!!
しまったぁ……。
下僕だったら、自分で作んなきゃマズくない?
あ―――どうしよう。
私が作ったって言えば良かったよ。
「食っていい?」
「へ?………どうぞ」
彼はケーキの箱を持って、部屋を出て行った。
フゥ~緊張する。