尾倉武文には忘れられない記憶がある。

それは幼稚園の時の事。

友達と冬のある日五人くらいで鬼ごっこをした。

その日は幼稚園近くの工場に忍び込んで鬼ごっこをしていて。

俺はその時、間違ってその工場の冷凍庫に忍び込んでしまった。

幼稚園の時の記憶なんて、そんなに鮮明なものではないけど、一杯着込んでいるのにすごく寒くて、恐くて。

閉じ込められてしまった俺はがむしゃらに扉を叩いていた。

その後は余りの寒さに眠くなってきて、眠ってしまった俺は病院で目を覚ました。

母親や父親からはこっぴどく叱られた。

その時、友達が工場の人に探すように話しをしてくれていなかったら俺は凍死していたかもしれないと後から知った。

あの頃よく毎日遊んでいたエミちゃん。

冷凍庫の件の時には工場の人に一生懸命になって探すように言ってくれたエミちゃん。

その後小学校に上がって、彼女とは別れてしまったけど。

俺は忘れない、彼女の事は。