「私は…、私は…、人が、人間が分からない…、だって人は裏切るだけじゃない!」

なんなんだよ。

なんなんだよこいつは!。

何でそんな淋しい眼でそんな淋しい事を言うんだ。

そう思ったら自分の眼から痛みとは違う意味で涙が溢れた。

「痛いの?…」

「ああ、だけどな、これは身体が痛いんじゃねーぞ!、ここが、心が痛いんだ…、お前が痛くないように痛みから目を反らすなら、俺がその痛みを感じてやるしかないだろ…、そうやって分かり合えるのが人間なんじゃないのか?なあ、山月…」

そう言うと、痛みの残る身体を抱えながら俺は立ち上がる。

「人間決め付けるには俺達はまだ若すぎるんだ…」

「……もう痛いのは嫌…、大切な人がいなくなるなんて嫌だよ…」

「だったら、守りたいものがあるなら痛くても守らなきゃいけないんじゃないのか?、それは山月、お前自身が考える事だ。それにしても警察ってさっき声したのに誰の気配もないな…」

入口から顔を出し、自分が歩いている方向を見ると、小太郎が先生を引き連れて走ってくる。

「あいつ遅いよ…、まったく…」