そうリーダー格の男が言うと、開いている扉とは反対側に走って行き、閉まった扉を開けると逃げていった。

間一髪だった。

本当に助かった。

小太郎の奴が連絡してくれたんだ。

そう安心した途端、身体中の痛みに気付く。
「くそ、いてて…」

身体を動かせない状態で工場の天井を見上げる。

くそ、情けなくて涙が出そうだ。

視界が、自分の涙でぼやける中に一人、何かがその瞳に写った。

眼を慌ててこすると、それはエミだった。

いつも長い髪に隠されていた瞳。

その長い髪が見下ろす今の状態では眼にかかっていない。

初めてエミの瞳を見た。

その瞳は澄み切っていて、とても綺麗で、そして涙で潤んでいた。
「お前、何泣いてんだよ…」

「どうして?…」

その言葉とともにエミの涙が俺の頬に落ちる。

「どうしてってなんだよ?…」

「だって、あなたは、私を助けても何の得もないでしょ…、それに私はあなたにとって友達でもなんでもない、ただの他人じゃない…、そんな人が私を助けてくれるはずなんてない、こんなのありえない!」

初めてエミが声を荒げているのを聞いた。