｢なんだよ、お前こいつの彼氏か？、お前かっこいいな！｣

そう言うと男の取り巻きと男がこちらにゆっくり向かってくる。

そんな状況に身体が硬直していく自分が情けなかった。

男はただ鋭い視線を俺の視線に重ねながら一歩、一歩と近付いてくる。

ついには俺の目の前まで来て、ただ黙々と睨みつけてくる。

そんな時間が数十秒続くと、それはまるで生き地獄のようだった。
何をするわけでもなく、ただ睨みつけるだけ。

ただ、そんな中で額から汗が流れ落ち、そんな顔を見た男が呟く。
｢お前、かっこいいじゃん…｣

そんな言葉とともに鳩尾に衝撃が走る。

胃液が逆流し、口から液体が飛び出る。

思いきり鳩尾を殴られたと理解したのは膝をついた時だった。

｢っ！？｣

｢お前みたいなのむかつくんだよな！おら！｣

次の瞬間、今度は下顎に衝撃が走る。

脳みそがぐるぐる回されたような感覚と、意識が飛ぶような脱力感が一気に押し寄せ、身体に力が入らなくなる。

そしてそのまま、地面に横たわる自分は、なんて非力なんだと思い知った。