元自動車部品を製造している工場跡は静まり返っていた。

その工場は向かい合わせに四棟あり、その合間にだだっ広い通り。
そこを冬を感じさせる風邪が強く通り過ぎる。

「どこにいんだよ…」

その時、奥左の工場より大きな音が聞こえる。

何が叩きつけられるような音。

それに危機感を持ちながら入口からそっと覗く。

そこには地面に横たわる山月と、その前に10人くらいの他校の制服を着た男子生徒。

いったいどうなってるんだ?。

いきなり出ていくにしてもこの人数だ。

様子を見てから動くほうが得策。

そう思い、聞き耳を立てる。

「お前が生意気だから痛い目に合わせてやってくれって、俺の彼女のお願いなんだよな」

言葉を発したのはそのグループの中でもかなりガタイが良い奴で、その男を中心に他の連中がいる事からもリーダー格に見えた。

彼女のお願い?。

それって。

一瞬にして状況が頭の中で構築される。

隣のクラスの矢口。

文化祭準備でエミに因縁をつけていた奴だ。
あいつがこの男に頼んだに違いない。