少し道路側に下がって上を見上げるとそこにはエミの姿。

「なに?……、なにか用?」

前髪が長すぎて目元を見る事が出来ない、その姿はまるで現代版の井戸から出てくる女の子みたいだ。

「いや、これ、先生からお前に渡しておいてって言われてさ…。だから持ってきたんだけど…」

「そう……、ちょっと待って……」

無愛想な声の主は扉を開けて部屋に入ってしまう。

しばらくするとエミが玄関を開けて出て来た。

「プリント……、早く…」

そう言うと、エミは俺の手からプリントをむしり取る。

そして、何も言わずに玄関は閉まってしまった。

「あ、おい!…」

俺は何もお茶だせとか、そんな事考えてたわけじゃない。

だけどさ、ありがとうの一言ぐらいあってもいいんじゃないだろうか?。

全く、最近の若い奴は。

て、おい!、俺もその若者なんじゃないの?。

と自分でノリ突っ込みをしてしまう。

「はぁ〜」

そんな自分に虚しさを感じて、すごすごと家に帰った。