「山月、静かな場所っていいよな…」

それでもこの場の空気を少しでも変えようと思う。

まあ、エミはそんなものは受け流してだんまりを決め込んでいるわけであるけど。

聞こえていないわけではないのだ。

そう思い言葉を続ける事にする。

「山月、校内回んないのか?」

「いい……」

ああ、こいつはまた俺を拒絶している。

それだけは理解出来る。

だけど、今の俺にはこいつを誘うべき真っ当な理由があった。

だから、ここで引く必要なんてないんだ。

「俺さ、暇なんだよ。お前、俺に付き合わないか?。今なら食い物でも飲み物でも奢るぞ…」

「いい……」

仕方ない、こうなったら最後の切り札を出すか。

本当はそんな事したくなかったけど…。

「カトケンがお前の事心配しててさ、俺にお前を頼むって言ってきたんだよ。だからさ、お前が例えここで一人がいいと言っても、俺は頼まれたから、お前の面倒を見る責任がある。だから…」

エミの手を無理矢理に取る。

「………」

「行くぞ!」

そうやって無理矢理に手を取っても目の前のこいつは何の表情の変化もない。