暁弥がボールをつきながら俺の目をじっと見る。

……抜かせない。

絶対に。


暁弥の体が右へ傾いた。

……フェイントだ。

直ぐ様直感で分かった俺はそれとは逆方向に動く。


「……へぇ。俺の動きは見切ってるってわけか」

「俺がお前に何回負けたと思ってんだよ。
負けっぱなしのままだと思うなよ」


ちゃんと学習してるんだ、俺だって。

それに……


「……一人じゃないしな」

「何言って……………っ!!」


素早く何かが暁弥の横を通りすぎた。

軽快に音をたてて跳ねていたボールは……もう暁弥の手の中にはなかった、


「ウチの先輩にイケメンで運動神経が良い、超足が速い人がいるんだよ」


本当、羨ましいぐらいに。


暁弥からボールをかっさらった南雲先輩は少し進んだあと、相沢先輩にパスをした。

そのまま相沢先輩がシュートを決める。


「ナイスです、南雲先輩」


俺がそう言うと、南雲先輩は乱暴に俺の頭を撫でた。

髪が……!!


「お前ばっかりに良いところ持ってかれちゃたまんねぇからな」


……いいじゃないっすか、先輩は素でカッコイイんだから。