第3クォーターが終わった。

逆転まであと一歩。


「花井、交代だ。
……高瀬」

「……はい」


俺はスクッと立ち上がると、随分健闘してくれた後輩の肩に手を載せた。


「お疲れ」

「先輩……」


それ以上は何も言わなかった。

言わなくても伝わってると思う。


「……大和。
ラストスパートだ」

「……あぁ。
……なぁ、蓮」

「ん?」

「……大切な人にずっと見守られてるって何か安心するな」

「何だよ、ノロケか?」

「そうじゃなくて」


……負けられない。

ずっと見てくれた人がいるからこそ。

ずっと応援してきてくれた大切な人がいるから……。

あの場所に立って、伝えたい想いがあるから……。


「栞奈」

「ん……?」

「……楽しんでくる」


俺がそう言うと……栞奈はふわりと優しく笑った。


「……うん」


強いから輝くんじゃない。

楽しんでる人が輝くんだ。

だったら……一番輝いてみせる。

誰よりバスケが好きだって……証明してみせる。