少しずつ挽回していってるとはいっても、未だ流れはアズイチのまま。

この状況を何とか打破しなくてはいけない。

……はずだった。


南雲先輩が蓮にパスし、蓮がドリブルをしながらスルスル相手をかわしながら前に進んでいく。

そして、翔太にパス。

翔太も落ち着いた様子でシュートを決めた。


……さっきから面白いように点が入ってる。


あれ……?

これってもしかして……いや、もしかしなくても……


「流れが変わった……?」

「……心配する必要はなかったみたいだな。
高瀬。お前、ちょうどいいところで出番が回ってくるかもな」

「はい」


ヤバい……試合に出たくて出たくてしょうがない。

ウズウズしてきた。


「大和、あとちょっとだから我慢しててね」

「……分かってます」


隣にいた栞奈に注意された。

いや、でもさ……見てると出たくなっちゃうんだよ。

今、超いいところじゃん。


「……よかった」

「え?」


栞奈の小さな声が隣から聞こえた。

俺が反応すると、栞奈は優しく微笑んだ。


「お互いに睨み合ったまま試合するのかなって思ってたから……。
だから、ちゃんと誤解が解けて……前みたいに二人が楽しんでプレーしてるところが見れて……本当によかった」


栞奈……。


「スポーツはさ、一番強い人が輝くんじゃないんだよ。
……一番楽しんでる人が、誰よりも輝いてる」

「………………」

「あたしは知ってるよ。
ずっと大和のこと見てきたんだもん。
……アキ君のことを憎みながらやってた時より、今の方が何倍もキラキラしてるよ」


……多分、栞奈は誰よりも……もしかしたら俺よりも俺のことを知ってると思う。

……だから、そんな栞奈の言葉だから……胸に深く染みた。