私の心の荒波は、しばらくするとさざ波に変わっていた。

初恋だった。

これは私、沢口美月の初恋だったのに。

人間って自分の心を最後は壊れないように、自分を自分で慰めて、守ってしまう。

いっそ、心が壊れたら痛くも何とも無くなるのに。

同じ痛みを世界中の女の子が味わっていると聞いても、自分がその中で一番痛いんだって思ってしまう。

そんな痛い奴になりたいわけじゃないのに。
そう思ってしまうのは何でだろう?。

学校前の公園。

噴水の前のベンチで、ただ一人うなだれる。
こんな顔、誰にも見せられない。

そう思って、ゆらゆら立ち上がると、そのまま家に帰らずに学校近くの商店街に向かう。
すでに日は暮れている。

何も用なんてないのに、ただ無駄に歩く自分が滑稽だった。

そんな時、何故か目に入ったのは怪しい露店。

よく、祭りとかに出ているようなアクセサリーを売る類の店だ。

店番をしているのは、顔や身体をおもいきり黒いローブのようなもので隠している男か女かも分からない人。

普段なら絶対にそんな店に立ち寄ったりしないのに、この日は何故か見入ってしまう。