校舎の玄関前。

何故か見つめあったまま言葉を発しない二人。

二人の名前は、沢口美月、そして山谷亜由美。

それでも緊張の糸はいつかは切れるものだ。
「あなたは誰?…」

先に痺れを切らしたのは山谷の姿をした沢口だった。

「私、私は、こんな事言うと頭おかしいって思われるかもしれないけど、山谷、山谷亜由美です。あなたは、あなたは誰ですか?…」

「私は、私は沢口美月。今、姿は山谷さんだけど、私は間違いなく沢口美月なの…」

二人はどちらからとなく、お互いの身体に触れる。

やっぱり、目の前の女の子は私だ。

お互いにそう認識する。

「ねえ…」

「なんですか?…」

「これってもしかして入れ替わりって事かな?」

そんな、恐ろしい仮説を言ったのはやはり山谷の身体の沢口だ。

「入れ替わり、ですか?…」

「そう。だって今確認した事を要約すると、あなたが山谷さんで私が私なのだから、これは単純に入れ替わったと考えるのが純粋じゃない?」

そうだ。今の話の中で考える事が出来るのは唯一、その仮説だけなのだ。