用意してある食事は純和風。

納豆に魚(鮭)、小松菜に味噌汁、ごはん。

沢口さんのハーフのような顔からは想像もつかない食事だ。

そして、食べてる姿を無駄に想像して笑いが込み上げてきてしまう。

ごめんなさい、沢口さん。

頭の中でここにいない沢口さんに謝る。

意味はないのだけれど…。

残しておいては変なので、お言葉に甘えてご飯も食べる。

ごめんなさい沢口さん。

これまた、他人の家の食事を勝手に食べているようで、頭の中で、沢口さんに謝る。

何か、非常に疲れる。
他人の身体に勝手に上がりこんで、さらに人の生活を物色してるみたいだ。

そんな事を考えるのが嫌で手早く食べると、鞄を持って、玄関で革靴を履く。

扉を開けると、ふと立ち止まってしまう。

「沢口さん、何処に住んでいたんだっけ?」

私はそれ程沢口さんとは親しくない。

だから必然として、家の場所も知らないんだ。

「困ったな…」

暫く呆然としてしまうが、家の前の道路を同じ学校の学生が歩いていくのを見て、それについていく事にした。