靄につつまれたような感じ。

白い霧。

何処までも深い霧。

その向こうから、少しずつ、シルエットが浮かび上がってくる。

あれは…。

沢口さん…。

私のないものを全部持っている。

そう、沢口さんだ。

ゆっくり、沢口さんの前に立つ。

沢口さんは自分の身長からだと見上げる形になる。

ぱっちりな目、鼻、口、整った顔。

ハイヒール履いてるわけじゃないのに高い身長。

鴨しかみたいな綺麗な脚。

動かないその姿は、まるで人形だった。

私は無いものねだりなんてしたくはなかった。

それなのに。

笹山君が好きなこの顔が、身体が、脚が、私は欲しくて堪らない。
だって、それしかないじゃない。

彼に好きになってもらうにはそれしかないじゃない。

神様、一日でもいい、私に沢口さんみたいな顔や身体や、脚を、下さい!。

そう願う私の周りの霧が少しずつ晴れていく。

悲しいけど、夢の終わりだと直感で分かってしまう。

振られた現実が夢なら良かったのに。

そう思うのは私の我が儘だろうか?。

昨日の次の日は。

私にとって振られた次の日なんだ。

それ以外の意味なんてないのに。