いかにも怪しい、怪しすぎる露店だった。

なのに、その怪しさより、その女性の優しい声に惹かれて、脚が露店に向いてしまう。

「今日は不思議な日だ。同じ運命の星を持つものが二人同時に訪れるとは…」

「運命の星?…」

「運命は互いに廻っている。それは陰と陽。誰かの幸せが、誰かの不幸せでもある。そうやって人の運命は廻っている」

そう言うと、その謎の女性は何かをそのローブのポケットから取り出し、手に乗せて、こちらに見せる。

「これを持っていきなさい。あなたの運命を拓く助けをしてくれるだろう」

その手の上には古めかしいお守りがあった。
祈願成就と表に書かれている。

釣りひもを親指と人差し指でくくり持ち上げると、特に変わった所はない。

「これ、お代は…」

こんな時なのに何故かそんな常識的な考えが口をついて出る。だが。

「お代はいらない。願いが叶ったら、その笑顔がお代みたいなものだ。そいつを寝るとき、自分の手で握りながら眠るといい。そうすれば願いが叶う。さあ、いきなさい…」

そう言うと深くローブを被り下を向いてしまう。

「あの…」

「……」