……やはり、気付いていたのね。
『エトワールの奇跡』。
この秘術は、エトワール家とそれに関係する一族にのみ受け継がれる能力。
現在の自分、そして、未来の世界にも自分の姿に似た(あるいは記憶を持った)者を作る禁断の技術。
……私、イア。…………いいえ、アンネ=シャーロンはその昔。
……エトワール家に、属していた。
話せば長くなってしまうけれど、大好きな「ロワお嬢様」のためなら多少は我慢するわ。
私は今の旦那、シャーロン国王と結婚する前、遊女だったの。冗談なんかじゃない、ほんとのことよ?
・・・今思えば、とても愚かだったわ。
毎晩違う男と寝ては、甘い睦言をいいあって……
反吐が出ちゃう。
そんな中、ひとりの男がやって来たわ。
彼こそが、後にリヴィエールを大国へと成長させる男、エポナ=エトワールなの。
彼は奥さんとは違う女性を試してみたくて隣国の遊郭までわざわざお忍びで来たみたい。
勿論、私はこの好機を逃さなかった。
私の持てる全てで、彼を楽しませたわ。
……だけど、その時は自分に要らない能力が備わってしまったなんて、考えてなかったわ。