「……そ・・・んな……」
俺の話を聞き終え、ロワ様は悲しいような、驚いたような顔で俺を見詰めた。
「・・・イ……貴方は、兄様の傀儡なの……?」
そうだよ。
……俺は、国のために生かせれてるただの人形なんだ。
「貴方は、私達を利用していたの……?!」
今にも泣きそうな顔で、ロワ様は俺を睨む。
「……申し訳ございませんでした……」
俺は居た堪れない気持ちになり、そのまま目を伏せた。
「……ちょ、ちょっと待ってよ!!」
今まで静かに俺の話を聞いていたノア様は、何かに気付いたように声をあげた。
「それじゃあ、イザヤは今までなんの目標もなく、自分の考えもなく生きて来たの?」
ロワ様も、同じことを考えていたのだろう目に涙を溜めて俺の言葉を待っている。
「……最初、・・・初めて、エトワール家に行き、働いてから数ヵ月はそうでした」
いつか終りが来る生活に歓びを見出だしても仕方ない。
ロワ様の召使だって、エポナ様の騎士だって、最初は母と兄貴のためだった。
・・・しかし、ロワ様の直向きな姿に俺は惹かれた。
あんなに眩しい人を裏切るなんて、俺には出来なかった。
「……俺は、ロワ様に出会って変わりました。 俺を救ってくれたロワ様のためなら、俺は地位も名誉も捨て……」
「そうはさせないわ」
台詞は、最後まで言えなかった。
突如響いた声が、感傷に浸っていた俺達を呼び戻した。
「随分と、好き勝手にやってくれたわね」