「婚約者なのです」


ちょっと待って、そう言いたくなるのをすんでのところで堪えた。


「・・・婚約、者・・・?」


私と同じ疑問を抱いたのだろう、ノアさんは訝しげに聞き返した。


「はい、その方はリヴィエールより北にあるシャーロン国の王子ルイ=ノワール様です」


「っ、ルイ・・・様」


何か思うところがあったのだろう、ロワさんは繰り返すと俯いてしまった。