「姫様、さぁ参りましょう。」
その男は私の方にゆっくり歩いてくると、そのまま床に膝をつき頭を垂れた。
「……は!?」
「の、乃愛?」
私と璃菜の声が重なり私達は顔を見合わせた。
(姫!?)
コスプレ男は立ち上がり、私の方を見て
「何をなさっているのですか? さぁ、行きますよ?」
私の腕を掴んだ。
「っ! 離してよっ!!」
いきなり腕を掴まれて、私はびっくりした。
男の腕を振りほどき、璃菜の元へ向かう。
「乃愛・・・」
璃菜は私を庇うようにすると、男の前にたちはだかった。
「・・・わたしの親友に、なんの用ですか?」
挑戦的に聞く璃菜を見た男は、私を見た時よりも更に驚いた顔で、
「……イア様」
「わたしの名前は璃菜(りな)です。人違いではないですか?」
(璃菜、すごい)
火花を散らす璃菜に驚きつつ、ことのなり行きを見守る。
「……すみません、・・・今は、こうするしかないのです・・・」
男は言うと、璃菜に近づき唇に軽く触れた。
「っ」
意識は、そこで途切れた。