「うぎゃああああああ」高音の耳障りな奇声を発しながら血の池は、地中に呑まれ、浄化の為、高温に曝された。
「また…哀しみが殖えるね」
彼女はしゃがみ込みながら、履いて居た、サンダルをマグマに投げ込む。そのサンダルに、浄化を逃れたタール達がしがみついて行くのが見えた。「お前が、そうやって
慈悲を与えるから、奴らはしがみついて来るんだぞ。お前が、払えば全て消える位の、簡単な命。何故、助ける?
お前が引きずり込まれる事は無くて、身動き出来ないと鬱陶しいだろ!」剣の血を不愉快そうに祓いながら、彼は歪んだ笑顔を見せた。
ばーか…。
言葉に出さないが、そう言ってるのは手にとるように判る。彼は全て顔に出るから。
多分、無垢なのだろう。だから、躊躇いが無い。肉体を持った者と度持たない者の差。
「全てのタール達を浄化したら、この星は保たない。それ程までにタールが殖えったって事なんだけど…あなたがいつも言うみたいに、してたら
とっくに仕事は完了してるの。けど、始めの時に比べて私は近付き過ぎた…いいえ、知りすぎたんだと思う。
明らかに、情が湧いたのね…肉体に入り過ぎたから。けど、それが嫌じゃない自分も居る。」
マグマの上に、キッチリと砂礫をかけながら、山を創ると彼女はそう言って微笑んだ…。
「マジバカだよなお前。コレが俺の…だと思うとこの先、どんだけこき使われるか判らないな…
まあ、いっか…多分、俺はお前のそう言うバカ嫌いじゃないし。」
何故、照れてるのか判らない…彼の表情を見ながらいつも思う。
多分、この照れの意味は一生考えなきゃ判らない難問なのだろう。
難問なんて無いのに。
私は大抵の問題は解いてきた。ただ、この問題だけは解けない。
解けない問題は、気持ちが悪い。
解けるのが当たり前だから。