「なんか変な感じ。」
鈴が小さく呟く。
「何が?」
綺羅の問い掛けに、鈴はどう説明して良いか戸惑った。
今まで一緒にいたのだ。だけど、感覚と言うか話をするだけだった。
なのに今は、隣に人がいるのだ。
しかも美しい男性。
ずっと黙り込んだ鈴を見て綺羅が鈴の顔を覗き込んだ。
「どうした?」
鈴は、綺羅の問い掛けにも答えられず、真っ赤になった。
それを悟られないように鈴は下を向いた。
「何、落ち込んでんだよ…まさか俺が肉体手に入れたから、居なくなるとか思ってるのかよ?」
えっ!
綺羅が居なくなる。
そんな事思っても見なかった。
けど、肉体を手に入れた以上は、綺羅は好きに動けるのだ。
鈴は悲しくなった。
「ばーか。そんな顔すんなよ一緒に居るに決まってるじゃん。
俺、今、お前しか興味ないから。」
「興味ないって、どう言う意味?」
綺羅の言葉に鈴はホッとしながら質問した。
「何、判らないのお前!ばーか。」
綺羅から返って来たのはいつもの言葉だった。
軽い調子で、明るく言う言葉。
ばーか。
だった。
たまにはムカつくけど、鈴は綺羅の言う、その言葉は嫌いじゃなかった。 「なあ、鈴…今晩どうする?」
「何が?」
突然言われて鈴は意味が判らなかった。
綺羅が、頭をかきながら言った。
「ばーか。」