手を大きく振りながらヒロくんを見送り終えた私は直ぐに部屋の中に入った。
「こんな、大きかったっけな…」
ヒロくんが居ないだけで、屋敷の大きさを改めて広く感じさせる。
物心ついた時から、私はこの屋敷で一人ぼっちだった。
幼い頃の記憶は全く覚えていない、小学生の頃は生活するに必要な物は全て朝起きると玄関の前に置いてあった。
部屋が20室あり、実際私が日頃使っているのは一番小さくて陽当たりの良いこの部屋だけ。
16年間、こんな山のてっぺんの屋敷には誰一人、人は訪れなかった。
それはある噂と、この屋敷の外見のせいだろう。
でも、その記録も先月ヒロくんと出会った時に破られたのだ。
まだ今程寒く無い日に、ヒロくんは屋敷の庭でお花を摘んでいたんだ。