……言われてみれば、

そんな出来事があった…かもしれない。




この場所で、女の子を助けたことはある。

助けた…なんて言ったらおこがましいけど。




明らかに新入生。

困ってたから、なんとなく放っておけなくて……

お節介だと思いながらも、つい手伝ってしまった。

そしたら、なんだかすごく感謝されて……



あれが、くるみ?


その子の顔はもちろん、俺はそのときの状況すら曖昧なのに……


くるみはそれをずっと覚えてた、ってこと……?




「あのとき、くるみはクローバーにお願いしたの。」


にこっと笑って、くるみは言った。



「“また会えますように”って。」



……っ。



「そしたら、またすぐに会えた。慎也くんの従兄弟だってわかった。だから……その後も、お願いし続けたんだよ?」



今日も会えますように。

くるみのほうを見てくれますように。

目が合いますように。

それから……


“くるみの王子様になってくれますように”



「いっぱいお願いしすぎちゃったから、あのクローバーはもうパワーを使い果たしちゃったんだと思うんだ。」