「だからさ、幸せにしてやれよ?“王子様”!」


「なっ……」


バシッと背中を叩かれて、にやっと意地悪な笑みを向けられて……

なんだか、もう…散々だ。



「ほら、さっさと行け」



さっき叩いた背中を、今度はぐいっと押しやる慎也。



「わっ…何するっ……」



バランスを崩しながらも、なんとか持ち直して、恨みをこめて振り返れば、



「くるみんとこ、早く行けよ。」



真剣な顔の慎也がいて。



「アイツ、今日も待ってるぞ?」


「……え?」


「中庭の、芝生んとこ。
お前と“初めて会った場所”なんだとさ。」



中庭……?



「お前のことだから“ボール遊び”でもしてたんだろ?」



ボール遊びって……

失礼なやつだ。
ちゃんと“サッカー”と言ってほしい。


確かに、中庭にはサッカー部のグラウンドがあって…去年の今頃は、頻繁に通ってたけど……



「あーっ、もう!考えるのは後でいいから。とにかく行けよ。」