「……へっ?」


「だから、“また明日”のキス!一緒に帰れなかったらできないでしょ?」


「はぁっ?」



まーたこの子は突拍子もないことを……



「ね?いいでしょ?」



可愛いけど…どこか妖艶さを含んだ笑みを浮かべながら、俺を見上げるくるみ。

その手はそっと俺の腕に添えられていて……


……まったく。


くるみのこれは、きっと、無意識な“計算”なんだと思う。

意図的ってわけじゃなくて、言うならば“天性の”才能?


一緒にいて、つくづく思う。

わかってるくせに、毎回まんまとハマってしまう俺もどうかと思うけどね。



「1回だけ、だよ?」



そう言って、そっとくるみの頬に触れて。


ゆっくりと顔を近づける。

閉じられた瞼の、睫毛の長さになんかもう驚かない。



「……っ」



でもやっぱり、

触れた瞬間のこの感覚だけは、毎回新鮮だ。









くるみが、この場所を好きな理由。


それは……



「……1回だけって言ったじゃん。」



誰にも邪魔されずに、
好きなだけキスができるから……らしい。